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改善は進むか?なかなか厳しい学童の現状

「子どもを安心して預けられない」という声が未だに多く聞かれる学童保育。4月に朝日新聞で掲載された連載「学童保育はいま」には、多くの反響が寄せられました。放課後児童クラブ、いわゆる学童保育の現場では、一体何が起こっているのでしょうか。読者の皆様からの声を受け、取材を行いました。
子どもたちが放課後児童クラブ(学童保育)で過ごす時間は非常に長く、夏休みには朝から多くの子どもが利用しています。学童保育は家庭に代わる「生活の場」としての役割を担っています。本連載「学童保育はいま」に寄せられた反響を紹介しつつ、子どもたちの居場所としての学童保育や、そこで働く職員の環境について皆さんと共に考えていきます。
(※2024年8月5日、6日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

運営の民間委託で職員が一新、学童保育に不安の声

「春には現在の職員のほとんどが辞める予定です」
今年2月、関西地方にある学童保育に子どもを通わせる30代の女性は、職員との面談でこう告げられ、驚きを隠せませんでした。これまで自治体が運営していたこの学童保育が、4月から民間企業に委託されることになり、その運営者変更に伴い職員も交代するとのことでした。実際に4月を迎えると、以前の職員5人が引き継ぎのため残っていたものの、それ以外の職員は全員辞めてしまいました。さらに5月には、引き継ぎを担当していた職員も全員退職し、新しい職員のみの体制となったのです。

人手不足と不安の広がり。民間委託後の学童保育に求められる改善

女性は「新年度になってから明らかに職員が不足しており、子どもたちが厳しく管理されている様子です。子どもからは、部屋を出てトイレに行くことさえも叱られると聞きました」と話します。別の40代の母親も、「日雇いバイト募集サイトで学童保育の求人を見かけ、不安になりました」と語り、旧体制の職員がいなくなった5月以降、学童保育に通わせることをやめたといいます。町営時代から勤務していた元職員の50代女性によると、運営者変更に伴い職員の移籍が求められたものの、雇用条件が不明瞭で不信感を抱き、全員が辞める選択をしたとのことです。この女性は引き継ぎのために新年度も一時的に残りましたが、「午前7時から午後7時までの過酷なシフトを提示された」と話します。また、「人手が足りない上、専門知識を持たない職員も多く、子どもを安全に預かるのが難しいと感じました」との声も上がっています。6月には、町内の学童保育に子どもを通わせる保護者たちが署名した請願が町議会に提出され、採択されました。この請願では「子どもが安心して通えず、保護者も安心して預けられない状況が見られる」とし、町に改善を求めています。

学童保育における行政の監督の重要性と増加する民間委託の現状

学童保育の需要が急激に増える中、行政が運営を民間企業に委託するケースが近年増加しています。全国学童保育連絡協議会(全国連協)が昨年行った全国約3万6千クラスを対象とした調査によれば、運営主体は公営が27%、民間企業が15%、そしてNPO法人や社会福祉協議会、地域運営委員会などがそれぞれ約10%を占めています。前年と比べ、公営や社会福祉協議会、地域運営委員会による運営が減少する一方で、民間企業による運営は増加傾向にありました。全国連協の佐藤愛子事務局次長は、学童保育の需要の急増に対して自治体の対応が追いつかず、アウトソーシングの流れが民間委託を進めていると指摘しています。しかし、民間企業が学童保育事業で利益を優先することで、保育の質や職員の待遇が悪化する懸念もあるとしています。佐藤氏は「学童保育の現場での人手不足や職員の質の向上は、民間企業に限らず共通の課題です」と述べた上で、「運営者がどこであれ、市区町村の条例や国の『運営指針』に基づき、子どもにとって望ましい保育が実現されているかを、事業の責任主体である行政がしっかりと監督する必要がある」との見解を示しました。

学童保育の不足で退職を余儀なくされる保護者たち

学童保育は、親が仕事で不在の小学生を放課後や長期休暇中に学校や児童館で預かるサービスとして、1998年に改正児童福祉法で法制化されましたが、その実施は自治体の努力義務にとどまっています。共働き家庭が増加する中、特に都市部を中心に学童保育を希望する家庭が増加しており、こども家庭庁の調査によると、5月1日時点で全国の学童保育登録児童数は約151万5千人と過去最多を記録しています。しかし、待機児童も約1万8千人に達しており、子どもたちの居場所の不足が深刻な社会問題となっています。学童保育の受け入れ態勢が不足しているため、利用希望者が入所できず、保護者が仕事を続けられないケースも発生しています。また、狭いスペースに多数の子どもが集まる施設もあり、重大事故も後を絶ちません。さらに、職員の過酷な労働環境や人手不足も深刻な課題です。

地域で子どもたちを支える放課後の居場所

神奈川県にお住まいの60代の女性は、自治体が小学校を利用して提供する「放課後の居場所」で働いています。この居場所には、親が仕事などで不在の子どもだけでなく、小学1年生から6年生までのすべての児童が利用できる仕組みになっています。

人手不足と安全の狭間で・・・増え続ける学童利用者と苦悩する職員たち

女性が働く施設には、利用登録している児童が100人を超えていますが、職員は常勤3人とパート・アルバイトを合わせて8人のみで、常に人手不足の状態です。「攻撃的な行動をとる子や、職員の話が理解できずに離れてしまう子もいるため、8人では出欠確認や電話対応、具合の悪い子どもの対応、さらにトラブル処理まで手が回りません」と話します。
子どもの安全を守るため、職員は30分おきに自宅に帰る子どもを正門まで見送ったり、予約しているにもかかわらず来ない子どもを自宅まで確認しに行くこともあります。こうした状況を自治体に相談しても、「職員を増やして」「研修を受けてスキルを上げて」と指示されるばかりで、受け入れを求められる人数は増える一方です。職員を募集しても、「低賃金で重労働、さらに平日は午後から19時過ぎまでの勤務という条件では、人はなかなか集まりません」と嘆きます。

増加する負担と人手不足、夏休みの学童保育の現状

限界に近い運営状況にもかかわらず、夏休みなどの長期休みには、通常の利用児童に加えて学区内の私立や国立、特別支援学校に通う子どもたちも利用するようになります。そのため、職員は夏休み中もほとんど休暇を取れず、連日朝8時から夜7時まで子どもたちの世話に追われています。
また、近年外国からの児童も急増しており、「保護者や子どもが日本語をほとんど理解できない場合、利用方法の説明に多くの時間と労力を費やす必要がある」と職員は話します。
さらに、職員も体調不良や家族の介護で急に休むことがあり、人員が通常の8人を下回る日が一定数を超えると補助金が大幅に減らされ、「赤字を出した」と責められることもあるそうです。職員は「事故やケガが起きないよう細心の注意を払いながら懸命に働いていますが、自治体の冷淡な対応や、利用方法を理解せずに不満を言う保護者の対応で心がすり減ります」と語っています。

専門性不足と課題の山積。多摩地域の学童保育が抱える現実

東京都多摩地域にお住まいの46歳の女性は、小学4年生の子どもを自治体が設置・運営する学童保育に預けていますが、その内情に驚かされたと言います。
この学童保育では、厳しいベテラン職員が子どもを叱りつけたり、頭をたたく場面が常態化しているとのことです。女性の子どもも、部屋移動中に列から少し外れただけで足を蹴られることがありました。
周囲には学童保育に行きたがらない子どもも多く、親たちは習い事に通わせるなどして、学童で過ごす時間を短くしようと工夫している様子です。「子どもが学童での扱いを受けていると親も強く意見できず、自治体に報告しても子どもが立場的に弱く、なかなか改善されません」と女性は話します。
また、障害を抱える子どもも在籍しているものの、職員には専門的な知識がないため、親が自宅で見るしかない状況に陥っているというのが現状です。
さらに、この学童保育には長年続く保護者会があり、昨年度にはくじ引きで女性も役員に選ばれましたが、大量の個人情報を扱うなど負担が重く、改革を求めても前例を重視する声が多くて実現は難しかったといいます。
「学童保育は保育園と異なり注目が集まりにくいですが、問題が山積していることを多くの方に知ってほしいです。共働き世帯を支えるための行政の覚悟も問われていると感じます」と彼女は語っています。

学童保育に不安を感じたとき、保護者が取れる対応とは

(1)日頃から子どもが学童保育でどのように過ごしているかを確認し、職員と良好な関係を築く
(2)気になる点があれば職員や運営者に伝える
(3)一人での対応が難しい場合は、保護者同士で連携し、集団で意見を伝える
(4)解決が見込めないときは、市区町村の担当課に相談し、それでも改善されない場合は都道府県に伝える
(※全国学童保育連絡協議会への取材内容を基に)

 

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