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なぜ?猛暑だったのに「長袖を脱がない子」

暑い日でも長袖を着続けていた子どもたちがいます。その理由は、体毛を隠したいという思いや、肌を覆うことで安心感を得るなど、さまざまです。
その傾向は小学校の高学年にも及んでいるとも言われています。
しかし、その姿に心配を抱く保護者や、「助けを求めているサインではないか」と感じる教師も少なくありません。各地で猛暑日が続いた中、子どもたちの服装について改めて考える必要があるのではないでしょうか。まずは、実際の生徒や保護者の意見を伺ってみることにしました。
(※2024年6月30日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

息子の「守るため」に続いた長袖の日々

名古屋市に住む51歳の女性は、小学2年生だった息子の姿を今でも鮮明に覚えています。2学期が始まったばかりのある朝、ランドセルを背負ったままリビングで座り込み、一歩も動けなくなった息子。その後、小学校を卒業するまで不登校が続きました。
振り返ると、息子は2年生の1学期、暑さの中でもジャンパーを着て登校していました。周囲の母親や級友から「暑くないの?」と聞かれ、「本人がいいと言うので」と答えてはいたものの、心の中では「何かおかしい」と感じていたそうです。
その兆候は1年生の冬に見られました。息子は「菌がついている」と言って頻繁に手を洗い、リモコンに手を触れずにひじで挟むようになっていました。そして、2年生の秋、息子は強迫性障害と診断され、頻繁な手洗いやシャワー、さらにはトイレに行くことすら困難になっていったのです。
その後、手厚いサポートのある中学に進学し、全日制の高校を経て、少しずつ日常生活を取り戻していきました。半袖を着るようになったのは、高校を卒業する頃のことでした。
現在、息子は都内で一人暮らしをしながら大学で学んでいます。息子に当時なぜ長袖を着続けたのか尋ねたところ、「自分を守るため」との返事がありました。
毛深さやリストカットの跡など、見えるものを隠したい気持ちは理解されやすいですが、息子のように目に見えない何かを隠したい場合もあるのではないかと、女性は感じています。その根底には、どちらの場合でも「自分を守りたい」という心理があるのではないかと考えています。

長袖にこだわる娘、親の心配と尊重の狭間で

大阪市に住む48歳の女性の娘(現在18歳)は、中学生の頃、暑い夏でも長袖を着続けていました。制服も部活動中も長袖で過ごしていたといいます。
娘は幼い頃から腕や足の毛を気にしており、小学5年生の頃に友人から「毛深いね」と言われたことをきっかけに、「永久脱毛をしたい」と言い出しました。周囲の親たちの中には、子どもを小中学生の段階で永久脱毛に通わせる人もいましたが、女性は成長期の娘の体への影響を心配し、高校生になるまでは脱毛を待つように伝えました。
中学に入ると、娘は自分で毛を処理するようになったものの、それでも真夏の学校生活や部活動では長袖を着続けました。特に卓球部の練習中は、暑さで気分が悪くなり、頭痛を訴えることもあったといいます。熱中症の危険があるため、親としては長袖を脱いで欲しいと思いつつも、娘の意思を尊重しました。
女性自身も小学生時代に手術痕を隠すため、身体測定の際に肌着を脱がなかった経験があり、そのときに受けた心配が、かえって嫌だったと感じたことを思い出します。娘も同じ気持ちだったのではないかと振り返ります。
娘は高校入学と同時に脱毛を行い、その後は暑い日には半袖を着るようになりました。腕がつるつるになったのを嬉しそうにしていた姿が印象的だったといいますが、「毛がないことが美しいとされる風潮には疑問を感じる」と母親は語ります。

長袖に隠された思いを超えて

東京都でウェブデザイナーをしているジャクソン智媛さん(31)は、自身も「長袖を脱がない子」でした。中学生の頃から、二の腕を見られたくなくて、暑い夏でも長袖を好んでいました。高校生になると、リストカットの跡を隠すために、冬用の長袖シャツを着るようになりました。
周りにも同じように長袖を着続ける子がいたため、不思議がられることもなく、教師や家族から声をかけられることもありませんでした。しかし、大学に入ると、夏に半袖と七分袖を重ね着する姿は目立つようになり、友人から「なぜ重ね着しているの?」と聞かれると、日焼け対策だと慌ててごまかしたそうです。夏の暑さに苦しみながらも、見られることへの不安を抱え続け、大学院進学後も半袖の上にアームカバーをつけて過ごしていました。
ある日、リストカットの傷が少し落ち着いた頃、突然「見られてもいいか」と思える瞬間が訪れました。初めて半袖で外出したときは、不安を抱えながらも、誰にも聞かれることはなく、涼しさを感じた彼女は「今まで隠していたのは何だったんだろう」と感じました。それ以来、長袖を着て隠すことはなくなりました。
「服装や天気の話の延長で、それとなく気にかけてもらえたら、もっと心を開けたかもしれない」と智媛さんは振り返ります。長袖を着ている人の中には、何かを抱えている人もいるという認識が広まることで、救われる人が増えるはずだと彼女は強調します。

小中高生の「夏でも長袖」選択、その理由とは?

「夏でも長袖」を選ぶ小中高生が少なくないことが、菅公学生服(岡山市)の調査から明らかになりました。この調査では、全国の中高生の母親1,200人を対象に、2020年にネットを通じて行われたものです。その結果、女子の約37%、男子の約25%が、夏の制服に長袖を着ていることがわかりました。
長袖を着る理由としては、エアコンで教室が寒いからという回答が最も多く34.1%、次いで日焼け対策や「皆が着ているから」が30.1%となっています。また、女子は「日焼け対策」が主な理由で46.4%、男子は「皆が長袖を着ているから」が32.8%で1位でした。
同社は約10年前にも中高生1,000人を対象に同様の調査を行い、その結果と比較しても大きな変化はないとしています。担当者は「中高生は周囲の目を気にしやすく、美意識が高いことからファッションや体型を気にして長袖を選ぶ傾向がある」と指摘しています。
また、最近の学校では、夏服と冬服の区別をなくし、衣替えの時期を固定せずに生徒が自由に選択できる学校も増えているとのことです。

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