今や脱毛は小学生から?見た目を気にする小学生たち
小学生などの低年齢層の子どもたちの間で、エステサロンや医療機関での脱毛が徐々に普及してきています。体毛を気にする子どもが増え、それを「心のケア」として捉え、脱毛を行う小児科医院も見られるようになりました。
専門家は、子どもの脱毛に関して「施術を行う者の適切な判断が重要である」と注意を促しています。
(※2024年8月22日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
低年齢層に広がる子どもの脱毛事情
7月中旬、小学1年生の佐々木利菜さん(6)は、母親と一緒に大阪市の脱毛サロン「ディオーネ」を訪れ、腕やひざ下、鼻の下の施術を受けました。彼女が脱毛を始めたのは5歳の頃で、この日は8回目の施術でした。きっかけは、保育園で同い年の男の子から「わ、毛があるね」と言われたことでした。
母親の明日香さん(33)は、「また同じことを言われるのが嫌だと悲しんでいた」と話します。腕の毛がない自分を見た利菜さんが「脱毛をしたい」と言い、現在のサロンに通うことになりました。「費用は安くないですが、本人が喜んでいるので通わせて良かったと思います」と明日香さんは言います。
子ども向けの脱毛について調べると、「キッズ脱毛」としてサービスを提供しているサロンや医療機関が数多く見つかります。小学生でも施術を受けられるところは複数存在します。利菜さんが通うディオーネでは、3歳から脱毛が可能で、同サロンを運営するトリニティ・ワールド(大阪本社)の坂本麻衣子代表によれば、14年前に子ども向けの脱毛として創業しました。当初は、小学3年生以下の施術者は全体の約0.5%でしたが、現在では5~6%に増加しています。坂本代表は、「美意識の低年齢化や、親世代が脱毛に対して抵抗を感じなくなったことが要因ではないか」と述べています。
また、医療脱毛を提供しているSBC湘南美容クリニックでは、小学3年生の春休み以降からわき、ひざ下、ひじ下の施術が可能で、それ以外は小学校卒業後から受けられるようになります。2023年には10~14歳の施術者数が約2600人となり、2020年と比較して2.6倍に増加しました。
子どものむだ毛に対する保護者の悩みと対応
ベネッセコーポレーションが今年4月から5月にかけて、小中高生の保護者を対象に行ったむだ毛に関する調査(有効回答数1,284人)では、子どもがむだ毛を気にしていると回答した保護者は77.3%に達しました。特に小学校1年生でも約57%がむだ毛を気にしているという結果が出ています。
一方で、脱毛は保険適用外であり、施術を行う機関によって安全性や効果にはばらつきがあります。そのため、子どものうちから脱毛を始めるのは早いと考える保護者も多く存在します。
埼玉県に住む42歳の女性の小学校3年生の息子は、約1年前から鼻の下の毛を「ひげ」として気にし始めました。女性にとっては産毛のように見えるものの、息子は「恥ずかしい」と感じ、マスクを外さなくなったそうです。悩んだ末、現在では週に一度、女性が自身のシェーバーで息子の毛を剃っています。彼女は「脱毛は大人になってからで良い」と考え、「特に男子のひげは将来的に『ここを残したい』などの希望が出てくるかもしれない」と話しています。毛の処理について家族でオープンに話せる環境を作り、自己処理は認めているとのことです。
また、東京都に住む43歳の女性は、小学4年生の娘が友達にすね毛を指摘されてから、気にするようになったと語ります。「まつげも濃くて可愛い」と娘に伝え、毛が濃いことが自己肯定感に影響しないよう配慮しているそうです。脱毛については、肌へのトラブルを心配しているとも述べています。
小児科で始まる心のケアとしての脱毛治療
小児科医院でも、脱毛を取り入れ始めたところがあります。川崎市にある「二子新地ひかりこどもクリニック」では、今年5月から小学4年生から高校3年生を対象にレーザー脱毛を開始し、既に11人が施術を受けています。このクリニックを運営する育心会では、子どものウェルビーイング、すなわち心身の健康や幸福を重要視しており、以前から小中高生が毛に関する悩みを打ち明けるケースが少なくなかったことから、数年前から個別の事情に合わせた脱毛治療を提供してきました。また、「思春期早発症」という通常より早く発育が進む病気により、脱毛を希望する患者もいました。
理事長の三井俊賢氏は、「毛深さがコンプレックスや自信の喪失、対人関係の問題につながるのであれば、脱毛は心の悩みを解決する一つの手段と考えています。これは美容目的ではなく、心のケアとしての取り組みです」と話します。
さらに、このクリニックではコロナ禍以降、「ティーンズ外来」として10代の発達や発育に関する悩み相談を積極的に受け付けており、不登校や肥満、多汗症などとともに、毛に関する悩みも相談対象に含めています。
子どもの脱毛、リスクと事業者選びの重要性
慶応義塾大学医学部皮膚科学教室の大内健嗣専任講師によれば、現時点で子どもへの脱毛による深刻なトラブルの報告はありません。しかし、大人と同様に毛嚢炎ややけど、硬毛化などのリスクが存在します。特に早い段階で脱毛を行うと、中学生頃に再び毛が生える可能性もあります。
理想的には、思春期が終わる16歳前後から脱毛を始めるのが望ましいとされていますが、周囲の目を気にして悩んでいる場合には、低年齢での脱毛も選択肢の一つとなり得ます。
現在、脱毛業界には多くの事業者が参入しており、その中には質の差があるため、施術者を慎重に見極めることが重要です。