ルールも企画も子ども達が決める!これからの学童の理想とは

子どもが放課後を過ごす場所は、学童に限らず、児童館や公園など様々な場所がありますね。望ましい放課後の過ごし方について、国内外の事例を参考に考えていきましょう。
(※2024年4月18日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
自分たちでルールと企画を作る児童館
東京都の町田駅に近い「子どもセンターまあち」を1月に訪れました。町田市が運営するこの施設は、児童館の機能を備え、0歳から18歳までが利用できる場所です。子どもたちは貸し出しのおもちゃや持ち込んだゲームで遊んだり、広いスペースを走り回ったりして、思い思いの時間を過ごしています。
小学6年生(取材時)の男の子は、「ここに来れば誰か友達がいる。平日も土日も来ている」と話しています。
2016年の開館に先立つルールづくりの段階から、子どもの声を聞くことを大切にしてきました。小学3年以上の子どもたちで構成される「子ども委員会」が、館内のルールづくりやイベントの企画を担当しています。
例えば、館内での飲食に関しては、児童館では飲食が禁止されているか、時間が限定されているところが少なくありません。しかし、子どもたちは好きなときに食べたいという意見があり、話し合いの結果、未就学児が使うエリアなどを除いて、テーブルの上で食べることが許可されました。
「お菓子のゴミが落ちていた」という利用者からの指摘があった際には、職員が子ども委員に「こんな意見があったけど、どうする?」と投げかけました。すると子どもたちは「禁止にはせず、みんなに呼びかけよう」と決定し、ポスターなどで自ら注意喚起を行いました。
館長の栗原尚子さんは、「子どもたちが過ごしやすい居場所を自ら作り上げることができるよう、大人が後押しすることが大事ではないでしょうか」と語っています。
子どもたちの放課後-評価制度・大人の働き方議論
子どもたちは、放課後に何を望んでいるのでしょうか。小学生の放課後活動を支援するNPO法人「放課後NPOアフタースクール」が、小学生の子どもを持つ保護者約300人を対象に、子どもの放課後の過ごし方について尋ねたところ、76%が「もっと友達と遊びたい」と考えていることがわかりました。また、保護者と子どもへのインタビューでは、時間や遊ぶ空間がない、仲間がいないといったことが、思うように遊べない理由として挙げられました。
国内外の放課後施策に詳しい日本総合研究所上席主任研究員の池本美香さんは、「学童をはじめ、日本では働く親のために放課後のあり方を考えることが主流です。しかし、欧州などでは子どものためにどうするか、という視点でスタートします」と語っています。
英国とオーストラリアの放課後施策
英国では2005年に、すべての学校が午後6時までの放課後児童クラブやスポーツ、音楽のクラブ、学習支援などを提供する方針が打ち出されました。さらに、校庭を遊び場に改造して開放したり、道路を遊び場として活用したりするなど、多様な居場所の選択肢が用意されています。
オーストラリアでは2011年に、放課後児童クラブに関する国の指針が策定され、そのタイトルは「私の時間、私たちの場所(My Time, Our Place)」という、子どもを主人公にしたものでした。放課後児童クラブの評価制度も整備され、その結果はホームページで公表されています。
池本さんは「子どもの意見を聞き、放課後を豊かな成長の場にするという姿勢が根本にあります。同時に、大人の働き方の見直しの議論も進んでいます。日本でも、放課後のあるべき姿が共有されることが望まれます」と語っています。
放課後は生活の場:管理ではなく国の責任で
日本学童保育学会代表理事で早稲田大学名誉教授の増山均さんのお話-
かつては親や祖父母が近くにいて、地域には遊び場や子どもの集団があり、親が放課後の過ごし方を心配することは少なかった。学童保育は、家庭の代わりに子どもたちが放課後を過ごす場所です。これほど社会的に必要とされているにもかかわらず、国としての位置づけは「放課後児童健全育成事業」という「事業」であり、保育所のような「施設」ではありません。そのため、財政規模が小さく不安定な状態です。
子どもたちにとっての放課後は、地域の中で遊び、生活する場であるべきであり、管理の場になってはいけません。子どもたちの育ちを支える放課後児童支援員は、広い視野と専門知識を備えた見守りと支援のプロである必要があります。学童の運営基準や支援員の養成制度がさらに充実するように、国や自治体が責任を持って取り組むべきです。
放課後の居場所問題を考える際には、子どもの願いや成長を中心に据えてほしいです。学校が終われば、そこは子どもの時間です。子どもたちにとって「居させられる場所」にならないような配慮が求められます。
学童保育の待機児童解消に向けた国と自治体の取り組み
学童保育の待機児童を解消するため、国は施設の整備に本腰を入れております。しかし、都市部では空きスペースがない学校も多く、学校外で条件が良い賃貸物件を確保するのも一苦労です。放課後の居場所をめぐって、自治体も頭を悩ませている状況です。