放課後子ども教室との一体化で学童保育所の機能向上を狙う

厚生労働省管轄の「放課後児童クラブ (学童保育所)」、文部科学省管轄の「放課後子ども教室」を一体化させる方向で厚生労働省が進めています。
目的は学童保育所の機能の充実・向上です。
現在の学童保育所は放課後児童支援員を始めとする施設スタッフによる子どもたちの放課後の居場所や長期休暇中の生活の場を提供しています。
どのように変わっていくのでしょうか。
目次
一体運用とその背景
厚生労働省管轄の「放課後児童クラブ (学童保育所)」、文部科学省管轄の「放課後子ども教室」を一体化させる動きは今に始まったことでは有りませんが、この背景には女性の就業率向上の狙いがあります。
未就学児の待機児童だけでなく、小学校にあがったとともに子どもの預け先に困り、主に母親が離職を迫られる「小1の壁」。
未就学児の間やっと預け先を見つけ、職場復帰したものの、就学後に預け先が見つからずに離職してしまう状況は社会問題となっています。
2023年度末までに約30万人分の保育受け入れを目指す計画を2018年9月に策定した国は、待機児童解消と同時進行で学童保育を充実させようとして、「放課後子ども教室」との一体化運用の拡大に向けたモデル事業をはじめ、対策強化に向けて動いているのです。
放課後子ども教室は親の就労状況と関係なくすべての児童が対象となります。
平成19年より始まっていた「放課後子どもプラン」
厚生労働省管轄の「放課後児童クラブ (学童保育所)」、文部科学省管轄の「放課後子ども教室」を一体化させる「放課後子どもプラン」は、平成19年には始まっていました。
その後コロナ禍を踏まえた「新・放課後子ども総合プラン」の一層の推進について厚生労働省、文部科学省から各地方自治地帯に通達が入っています。
「新・放課後子ども総合プラン」は、共働き家庭などの「小1の壁」対策することはもちろん、すべての児童が放課後や土曜日、長期休暇などを安心安全に過ごし、かつ多様な体験・活動を行うことで次代を担う人材育成につなげるべく「学童保育所」と「放課後子ども教室」を一体化、または連携して実施する総合的な放課後対策事業です。
学童保育所と放課後子ども教室の比較
各自治体によって学童保育施設と放課後子ども教室の内容は違いますが、基本的には以下の違いがあります。
目的・趣旨
学童保育所は「児童福祉法第6条3第2項」に規定があるとおり、保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、授業の終了後に児童厚生施設等を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図るおとを目的にしています。
上記にもある通り、子どもたちの放課後の居場所や生活の場です。
放課後子ども教室は、子どもたちの居場所であることは同じですが、子どもたちに学習、スポーツ・文化活動、地域住民との交流の機会を提供することにより、子どもたちが地域社会の中で、心豊かに健やかに育まれる環境づくりを目的にしています。
学童保育施設でも地域の交流はありますが、その内容が充実していると言えるでしょう。
対象
上記にもある通り、放課後子ども教室は対象が全児童になります。
保護者の就業状況は関係ありません。
学童保育所は御存知の通り保護者が就労中に子どもたちの居場所を作ることが目的ですから、就労している保護者のお子さんが対象となります。
それも主に10歳未満です。
放課後子ども教室の場合、自治体によりますが中学生まで参加しているケースもあります。
開設施設
学校の敷地内の学童保育施設や、小学校、保育園の開いている教室、児童館などで行われている学童保育。
放課後子ども教室は基本的に小学校や中学校の施設を利用して開催されています。
他にも公民館や児童館、特別支援学校などの施設の利用も確認されています。
開催日や開催時間などは自治体によっても違いますが、学童保育の開催日が年間250日以上を基本としていることに比べ、放課後子ども教室は年間110日程度の開催日となります。
また、利用料金も施設や自治体によって違いますが、学童保育所がおやつ代や育成代が必要なことに対して、放課後子ども教室は基本的に無料です。
施設職員
学童保育所は、資格を取得している放課後児童支援員という専任者と、資格がなくても働ける学童保育指導員が子どもたちの居場所や遊びを提供します。
1施設に支援員が二人以上、もしくは支援員と指導員が配置されていることがルールです。
放課後子ども教室は協働活動支援員、協働活動サポーターなどの地域住民のボランティアが子どもたちとの交流を図ります。
実施施設数
学童保育所は平成25年度に21482箇所、放課後子ども教室が10376箇所です。
各教室により、その特色はさまざまですが、今回の「放課後児童クラブ (学童保育所)」、「放課後子ども教室」の一体化によってこの実施説数を原則としてすべての小学校校区での実施を目指すとされています。
学童保育所が放課後子ども教室との一体化、連携がなされることにより、これまで以上に学童保育のスタッフに求められる専門性が多様になってくる可能性があります。
また、地域との交流が深まり、教育プログラムが充実することにより、これまでできなかった子どもたちの勉強への困りごとや楽しいイベントへの対応もできるようになるでしょう。
どちらにしても国や自治体の今後の方針にアンテナを張っておく必要がありそうです。