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年1ガチャ?現代のクラス替え事情とは?

新年度は、新しいクラスが気になる季節です。かつては「2年に1度」が一般的だった小学校のクラス替えですが、最近では「1年に1度」が増えているようです。この変化の背景にはどのような理由があるのでしょうか。クラス替えのメリットやデメリットについて考えてみます。
学校では、どのような議論が行われ、どのような考えに基づいてクラスが編成されているのでしょうか。一方で、児童数が少なく、1学年に1クラスしかない学校も少なくありません。クラス替えを通じて見えてくる、最近の学校と子どもたちの状況を探ってみます。
(※2024年3月24日、31日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

毎年のクラス替え導入に感じる違和感とその背景:都内小学校教諭の声

東京都内の小学校で5年生の担任をしている男性教諭(37)は、今年1月にクラス替えの頻度が議論され、2025年度から毎年行うことが決まりました。現在は2年ごとに行われていますが、「毎年がいい」という声が教員から多く上がったためです。「2年間は耐えられない子が増えた」「保護者の要望が多い」などの理由から、半数以上の教員が「毎年」のクラス替えに賛成しました。一方で「2年間の方が絆が深まる」「5、6年生だけは持ち上がりがいい」といった反対意見もありましたが、最終的には「毎年」が採用されました。

この学校では一昨年もクラス替えが議題に上がりましたが、「凝集性を培うことも教育的に重要で、1年間では難しい」という理由で見送られました。男性教諭は、「毎年も隔年もそれぞれの良し悪しがありますが、児童の変容や保護者の要望の比重が大きくなり、『毎年』に軍配が上がる時期が来たのだろう」と話しています。

男性教諭自身は、2年ごとの学級運営が良いと考えています。学級がうまく機能すれば絆や団結が生まれ、濃い人間関係が築けるからです。また、クラス替えに伴う事務作業が2年おきになるのもありがたいと感じています。しかし、毎年リセットされることに対しては、機械的すぎるという違和感を覚えます。「社会に出れば、嫌なことがあっても簡単に関係をリセットできない。でも、クラス替えを毎年にすれば、うまくいかなかったら関係を切ってしまえばいいんだと暗に教えることにならないか」と懸念しています。

実際のクラス替えはどのように決められているのでしょうか。男性教諭の場合、まず学習面、運動面、生活面から子どもたちの状況を考え、均等になるように分けます。1学年3クラスなら、現在のクラスを3等分し、残り2クラスの3分の1ずつと「パズルのように」組み合わせます。ただ、「1回で決まることは、まずない」と言います。離した方がいい子やリーダーシップのある子などのバランスを見ながら入れ替え、時には以前その学年の担任をしたことがある教員の意見も聞いて最終確認します。

最も悩ましいのは保護者の要望です。「あの子とは別にして」などと希望を伝える保護者が年々増えているといいます。「ベストだと思っても、予想外の展開になることもある。うまくいったかどうかは、クラスが終わる時にならないと分からない。そこがクラス作りの難しさであり、おもしろさでもある」と語っています。

学力バランスと特技・人間関係を考慮したクラス編成:帝京平成大学准教授・鈴木邦明さんの見解

私の経験では、公立小学校では基本的に学力に基づいてクラス替えを行います。多くの学校では年度末にテストを行い、男女別で成績順に整理します。1学年に3クラスがある場合、1位の子を1組、2位の子を2組、3位の子を3組、4位の子を再び1組に…と繰り返します。同じことを男女で行い、学力と性別のバランスを整えます。これが基本形です。

次に児童の特技や個性を見ながら調整していきます。リーダーシップのある子、足の速い子、ピアノが弾ける子は行事の時に中心となってくれるので、どのクラスの担任も1人は欲しいものです。

また、人間関係も考慮します。いじめ事案があれば、新年度で別のクラスになるようにします。保護者同士の仲が悪いケースもあるので、トラブルを避けるために調整することもあります。このような準備をして新年度の教員配置が決まれば、例えば新人教員が受け持つクラスはトラブルが少なそうな子たちで固め、ベテラン教員のクラスはその逆にするなどと調整します。

保護者から「仲良しの子と一緒のクラスにしてほしい」といった要望がよくありますが、それでクラスを決めることはあまりありません。ただし、トラブル情報は学校側が把握し切れていないことも多いため、伝えると教員も助かります。

教員が子どもたちの人間関係を把握することは非常に重要です。引き継ぎをしっかり行うためにも、一部の学校で見られる春の始業を1週間ほど遅らせる動きは良い試みだと思います。大学の教員養成課程でも、クラス運営のノウハウをもっと教えていく必要があると考えています。

「1学級のみ」のメリット:人間関係と距離感を学ぶ機会

学校教育法施行規則では、小学校の学級数は1校12~18学級を「標準とする」とされています。1校11学級以下は小規模校とされ、1学級のみの学年がある学校が該当します。2023年度学校基本調査によると、公立小学校の4割以上が小規模校であり、少子化の進行に伴い今後さらに増えると考えられます。したがって、「クラス替えができない」環境は一部の子どもに限ったことではないのです。

クラス替えができないことは、人間関係が狭いなど否定的に捉えられることもありますが、それだからこそのメリットもあると考えます。合わない人と一緒でもやり過ごすことができ、「あの人はそういう人だから」と慣れて適度な距離をとれる力は、生きていく上で重要です。接触頻度が高いほど相手への理解が進むため、クラス替えがない環境の方がこのような力が身につくと考えます。

一方で、ネット社会の現代では、子どもたちも共通の趣味などで話が合う人とネット上で出会い、交流しています。「遠くの同質性」と付き合う時代だからこそ、自分と合わない他者との付き合いが一層重要になると感じています。

小規模校では日頃、見知った顔ぶれで学んでいますが、学校のネット環境が整い、別の学校の子どもと交流や議論ができるようになっています。クラス替えができない学校は、こうした「他流試合」を意識的に積ませることで、課題を乗り越えることができるのではないでしょうか。

新年度からのクラス替え頻度変更に寄せて:学校教育の在り方を考える

我が子が通う小学校でも、新年度からクラス替えの頻度が「1年に1度」に変更されます。喜ぶ声と残念がる声、双方が子どもや保護者から聞こえてきました。

毎年のクラス替えと隔年のクラス替え、どちらが良いのか考えてもなかなか答えが出ませんでしたが、取材した教諭の言葉に納得させられました。「それぞれに良し悪しがあるが、『毎年』に軍配が上がる時期が来たのだろう」と言われたのです。

いじめや不登校、教員の多忙さ、保護者との関係作りの難しさなど、学校から聞こえる悲鳴は年々増しているように感じます。これらの問題の一端が、クラス替えの頻度の変更にも表れているのでしょうか。

最近、取材先で「既存の学校教育に限界が来ている」という言葉をよく耳にします。クラス替えの議論を機に、学校の在り方について改めて見つめ直す必要があると感じています。

「3年間同じクラス」維持されたある都立国立高校の方針に対する生徒の声は・・・

昨秋、東京都立国立高校(国立市)でクラス替えを巡る大きな議論が起こりました。同校では長年、生徒が3年間同じクラスで過ごしてきましたが、「閉塞感を感じている生徒もいる」として学校側がクラス替え導入の方針を示したのです。しかし、結局「クラス替えなし」は維持されました。生徒たちはこれをどう受け止めたのでしょうか。

同校は昨年10月、2024年度の新入生からクラス替えを導入したいとの考えを表明しました。「クラスになじめない」という生徒が一部におり、閉塞感をなくしたいという狙いがありました。

生徒からは反対の声が上がり、署名活動も行われました。学校は翌月に方針転換し、「3年間クラス替えなし」を維持しながら、生徒の意見を聞いてクラスのあり方を検討することにしました。

生徒たちはどのように受け止めたのでしょうか。3年のある男子生徒はクラス替えに反対し、「クラスメートとは家族以外で最も長い時間を一緒に過ごし、友達以上の信頼関係を築けた」と語ります。

彼は公立の小中学校で毎年クラス替えがあり、小学校時代に仲間外れにされた経験からクラス替えで救われたことがありました。しかし、高校では同じ志を持つ仲間と濃密な時間を過ごし、深い理解を得られたと感じています。「自主性を重んじる校風なのだから、安易にクラス替えにせず、みんなが充実した高校生活を送れるよう生徒自身が考えるべきだ」と述べました。

一方、3年の女子生徒は「日本一」とも称される同校の文化祭の準備を考えるとクラス替えはない方が良いと考えつつも、「孤立しがちな生徒もいる」と指摘します。文化祭は学年をまたいで準備が行われ、多くの生徒がそのために入学していますが、中には引け目を感じたり体調を崩したりする生徒もいるとのことです。

また、別の3年の男子生徒は「クラスの中で強い疎外感を感じていた」と明かしました。学校ではクラスの団結が重視される雰囲気の中で、彼は同級生や担任との関係がうまくいかなかったと述べ、「どのクラスになるかは運なのに、人間関係が勝手に決められるのがずっと不満だった」と話します。

全校集会で校長からクラス替えの方針を聞いたときは救われる思いがしたという彼は、「もっと多様な人と交流したかったし、その方がもっと輝いた高校生活になったと感じる」と振り返りました。

「クラスの枠を超えた教育の在り方を問う」信州大学・伏木久始教授の提言

クラス替えは子どもたちの学校生活に大きな影響を与えます。信州大学の伏木久始教授(教育学)は、「クラスという枠を超えた議論が必要だ」と訴えています。

全国的に小学校のクラス替えの頻度が高まっています。同級生と長い時間を共にし、担任が全ての面倒を見ることで信頼関係を育てる従来型の「クラス」には限界が来ているのです。特に都市部ではその傾向が強く、子どもたちは学校やクラスだけでなく、学習塾や習い事などで様々な大人と関わっています。担任よりも頼りにしている大人がいると、学校の信頼度は相対的に低くなります。そのため、様々な教員と関わりたい、今の担任が合わないといった理由でクラス替えを求める声がここ数十年で高まっています。

地方では担任との信頼関係を前提とした従来の考え方が残っており、都市部に比べるとクラス替えの頻度は低いですが、人口減少が進んで1学年1クラスという学校も多い状況です。

最近の学校は、増え続ける不登校や国が求める「個別最適な学び」への対応など、クラス替えでは対応しきれない課題に直面しています。クラス替えのメリット・デメリットよりも、そもそも「クラス」をどうとらえるかを問い直す必要があります。

伏木教授が研究で訪れているフィンランドやニュージーランドの多くの学校では、座席を固定するという発想がなく、授業中も必要に応じて自由に移動し、それぞれに合った学び方を選んでいます。また、学年を越えたクラス編成や複数の学年の子どもが交流するイエナプラン教育などを実践する学校もあります。進路指導は担任ではなくキャリアカウンセラーが担い、道徳心を学ぶという意味では教会などのコミュニティーが果たす役割も大きいです。

日本では、学習塾や習い事が盛んでなかった高度成長期以前は、学校が最先端の情報に触れられる貴重な場であり、友人関係も基本的に学校にしかありませんでした。教員は勉強も集団生活も道徳も教え、子どもたちは固定化された人間関係の中で育ちました。

今では、その頃のように教員に全てを求めることは難しくなっています。教員は事務作業に追われて子どもと向き合う時間が取りづらく、数も足りません。学習面では個別最適な学びを採り入れ、生活面ではクラス単位の関わり合いを生かすなど、様々な大人が関わる工夫が重要です。

クラスの枠が柔軟になり、教室に多様性が認められれば、子どもは自分の居場所を見つけやすくなり、公教育からはじかれる子どもも減るでしょう。クラスが固定化されたものというイメージが変われば、不公平感も減るでしょう。

クラス替えは人間関係をリフレッシュさせる効果がありますが、「合わない」子や先生を避けるだけではいけません。合わない人とも上手くやっていく力を身につけるために、クラスは存在すべきです。しかし、どの子も学校から排除されないよう、クラスという枠を柔軟に設定し、多様性を認める議論が必要です。

「クラスの意義を問い直す」伏木教授の指摘と自身の経験

「良い思い出を強調するのは学校の中の成功者であり、そうでない人もいるのです」。伏木教授の言葉にハッとさせられました。

私自身、小中学校時代に運動会や球技大会で級友と協力し合ったことが良い思い出として残っています。中学3年に進級する際には、一番の友人と同じクラスになり、新クラスの掲示を見てハイタッチしたことも懐かしい思い出です。

しかし、思い返せば高校時代はクラスに仲良しの友人がおらず、休み時間には別のクラスに行ったり昼寝をして過ごしていました。何のためにクラスはあるのか、そもそもクラスは必要なのか。その問い直しから見えてくる世界もあるのではないでしょうか。

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