フランスの学童保育はほぼ全国の自治体で利用可能な公共サービスとして提供されています。
これは基礎自治体に相当する市町村が提供する公共事業であり、主に保育学校（幼稚園）の3～5歳児と小学校の6～11歳児を対象としています。
学童保育は「家」と「学校」以外の時間帯を支援し、各自治体の児童政策の焦点が反映されています。
2021年の統計によれば、フランス国内には約3万1000カ所の学童保育施設があり、受け入れ枠は275万人分です。
9割以上の対象年齢児童が学童保育の提供地域で就学しており、山間部や農村部を除くほぼ全国の児童が利用可能な公共サービスとなっています。
学童保育は公教育でも重要視され、国が設備や人員の最低基準を定め、専門資格を持つスタッフが活躍しています。
フランスでは学童保育が家庭や仕事と調和する重要な要素として位置づけられ、多くの家庭に支えとなっているのです。

フランスの学童保育には、「学校周辺時間サービス（Service périscolaire）」と「学校外サービス（Service extrascolaire）」の2つのカテゴリーがあります。
平日は学校内で行われ、1日4時間以上の受け入れをし、休日は朝から夕方まで児童を受け入れます。
前者は「預かり所（Garderie）」と呼ばれ、時間帯は自治体によって異なります。
後者は「余暇センター（Centre de loisir）」として知られ、朝から夕方まで充実したサービスを提供するのです。

こうしたサービス時間の長さと継続性が保護者の子育て支援に大きな影響を与えています。

フランスの学童保育は、子どもたちを日常的に見守るスタッフによって支えられています。
平日と休日、通年を通じて同じスタッフが児童のケアにあたります。
平日は学校内で活動し、昼休みや給食の時間には教師と協力し、必要に応じて親と面談することもあります。
子どもたちにとっては、日常的なサポートを提供する大人であり、教育者にとっては学校生活をサポートする仲間です。
親にとっては、勉強以外の成長を持続的に支援する存在です。

学童保育の魅力は、多様な活動内容にもあります。
平日は時間制約がありますが、工夫を凝らしてさまざまな活動を提供しています。
小学校入学前は休息と遊びが中心であり、小学校からは宿題支援に加えて、集団でのゲーム、芸術活動（お絵かき、ビーズ細工など）、スポーツ（サッカーなど）など、子どもたちが楽しめる幅広い活動が提供されます。

地域社会の継承と活性化を目指すプログラムでは、休日の学童保育において滞在時間が長いため、午前と午後でグループを分け、さまざまなメニューを提供しています。
前述のゲーム、芸術活動、スポーツに加えて、自転車レッスン、演劇、詩や物語の制作など、時間のかかる活動も用意されます。
自治体が主体となり、公共図書館、ミュージアム、プール、運動場なども活用されます。

これらの活動には、地域社会の継承と活性化への価値が込められています。
子どもたちはレジャーや遊びを通じて地元の歴史や施設を知り、地域社会との結びつきを築きます。
活動メニューは自治体と国の協定書「地域教育計画」の一環として現場スタッフによって検討・考案され、団体行動を通じて市民生活の基盤を学ぶことが教育計画の中核です。

平日の学童保育では、一般的に保護者負担は不要で、運営費用の約7割が公的資金から賄われます。ただし、自治体によって活動内容や負担に差異があります。特定の自治体では、事前登録も不要で、全ての生徒が無料で利用できる場合もありますが、休日の学童保育には通常、事前登録が必要で、利用料は保護者の所得に応じて設定されます。

自治体は、保護者の利用料に加えて「全国家族手当金庫」と国からの助成金を受け取りながら、学童保育の運営費用を自治体予算で賄っています。財源の割合は、自治体負担が約5割、家族手当金庫が約2割、保護者負担が2割強で、公的資金が約7割を支えています。この支出のうち8割は人件費に充てられ、2021年には全国家族手当金庫が学童保育に関連して支出した金額は14億ユーロ（約2200億円）に達しました。

学童保育は、学校や家庭では過ごしにくい子どもたちにとって、重要な場所であり、フランスの学童保育スタッフは子どもたちの楽しい時間を保護し、社会性を養うことに高い意欲を持っています。
特に強調すべきは、学童保育が学校や家庭では十分に過ごせない子どもたちにとって、重要な居場所であることです。

多くのフランスの学童保育スタッフは、自身が学業や家庭環境に苦労した経験を持つ人々です。
子ども時代に提供された安心感と遊び、大人の見守りを、今度は子どもたちに提供したいと考えています。
この善意が学童保育を支え、子どもたちにとっての重要な支えとなっています。

さらに、学童保育が国と自治体による公共サービスとして提供されていることから、子どもを社会全体で育てるというフランス社会の理念と姿勢が反映されています。

いかがでしょうか。
フランスの学童保育を異なる視点から紹介し、日本との大枠の違いを示しました。
方法は異なるかもしれませんが、子どもの生活時間を保護することの重要性は、どの国でも共通する価値です。
また、従事者の確保や養成、子どもたちの安全を守る課題は、国を越えた共通の懸念事項です。
日本の学童保育について理解し、将来を考える際の参考になるように、海外の学童保育との比較をしてみてはいかがでしょうか。