子どもの権利に関する教員のアンケート結果について

小学校~高校の現職教員を対象に、「学校生活と子どもの権利に関する教員向けアンケート調査」が行われ、結果が発表されました。
「子どもの権利」に関することは学童保育の運営や保育にも関わってくる問題です。
学童保育の支援員・指導員の中には元教員というスタッフも少なくありません。
現状、「子どもの権利」はどのように認識され、今後取り組まれていくのでしょうか。
アンケート結果についてご紹介します。(※セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン調べ)
目次
子どもの権利に関する教員向けアンケート
全国の小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、外国人学校などの現職教員468人を対象にした「学校生活と子どもの権利に関する教員向けアンケート調査」。
「子どもの権利」の認知度や理解度の程度を知り、権利教育の実施状況や課題点を明らかにすること、教員を始めとした学校関係者を中心とした子どもの権利の社会啓発、「子どもの権利」教育の実施を求めることなどを目的として行われました。
アンケートの内容は、「子どもの権利」に関する認知度や理解度、学校における権利の尊重、普段心がけていること、取組状況や課題についてのものです。
アンケート結果
子どもの権利を知っていますか?
●内容までよく知っている(21.6%)
●内容について少し知っている(48.5%)
●名前だけ知っている(24.4%)
●全く知らない(5.6%)
「子どもの権利」の認知度を図る質問では「内容までよく知っている」教員は約5人に1人という結果になりました。
また、3割の教員が「全く知らない」「名前だけ知っている」と答えており、子どもと密接に関わる教員の認知度としては改善が必要なことがわかります。
学童保育所の職員に関しても同様の結果が得られるのではないでしょうか。
子どもの権利としてふさわしいと思う内容をすべて選んでください
●すべての子どもは大人とおなじように1人の人間であり人権を持っている。
●子どもは義務や責任を果たすことで権利を行使することができる。
●子どもは自分と関わりあるすべての事についていけんを表明でき、その意見は正当に重視される。
●子どもは家庭でも学校でもどのような場所においても、あらゆる暴力から守られる。
●障害のある子どもを含むすべての子どもは、社会に積極的に参加し、インクルーシブな教育を受けられる。
●子どもは必要な医療・保健サービスや社会保障制度を利用し、十分な生活を送ることができる。
●子どもは成長途上のため、子どもに関する事はいかなる場合も大人が子どもに代わり決めるよう推奨される。
●子どもは遊んだり、休んだりする権利を持っている。
●すべての子どもは性別や人種の違いで差別されず、同じ権利を持っている。
上記から選択する問いでしたが、正しい「子どもの権利」の内容である「遊ぶ・休む権利」、「意見を聴かれる権利」を選択できていた教員は6割前後にとどまりました。
逆に、「子どもの権利」に含まれない「「子どもは義務や責任を果たすことで権利を行使することができる」 を選択した教員は4人に1人を超えるという結果に。
あなたは、学校生活において子どもの権利を尊重していますか?
●尊重している(48.5%)
●ある程度尊重している(45.3%)
●子どもの権利について考えたことがなかった(3.0%)
●あまり尊重していない・尊重していない(3.2%)
基本的人権である「子どもの権利」。
それを「尊重している」と約半数の教員が回答し、「ある程度尊重している」と回答した教員も半数近い一方で、「考えたことがなかった」と「あまり尊重していない・尊重していない」をあわせて回答した教員が6.2%いました。
普段、学校で子どもと接する際にどのようなことを心がけていますか?
●学校運営において、子どもの意見を聴き、その意見を取り入れている
●学級運営において、こどもの意見を聴き、その意見を取り入れている
●子どもが休んだり遊んだりする時間を確保・考慮している
●こどもの最善の利益は何かを考えて、様々な判断をしている
●子どもが等しく教育を受け、経済的不安なく授業や学校生活に参加でき、自分の力を最大限に伸ばせるよう働きかけている
●心を傷つける言葉を使う、身体を叩くなどせず、子どもにとって分かりやすい表現で物事を伝えている
●性別・障害・人種・生まれや文化(ルーツ)・経済状況などにより差別せず子どもと接している
上記の項目で「当てはまる・少し当てはまる」、「どちらともいえない」「あまり当てはまらない・当てはまらない」の選択の結果、「子どもの意見を聴き、その意見を取り入れている」について、学校・学級ともに「どちらともいえない」、「あまり当てはまらない・当てはまらない」との回答が15%を超えていました。
また、「休む・遊ぶ時間を確保する」についても同様の結果となっています。
「意見を聴かれる権利」「休む・遊ぶ権利」について教員、学校における理解度も尊重度合いも低いことがわかりました。
直近の1年間で、子どもたちに子どもの権利を伝えるために、あなたの学級ではどのような取り組みをしていますか?
●特に取り組みはしていない(47.0%)
●子どもたちが身近な権利について議論するなど、授業で子どもの権利をより深く学ぶ機会をつくった(23.9%)
●授業で教科書を読んで、子どもの権利に関する内容を伝えた(19.4%)
●授業外で子どもの権利についてより深く学ぶ機会を作った(18.6%)
●授業外で子どもの権利を伝える工夫をした (17.1%)
「特に何もしていない」と答えた教員が約半数いました。
「子どもの権利」を尊重している割合が高いため、取り組みの必要性を感じていないことが伺えます。
子どもの権利に関する授業を実施するにあたって、どのような難しさを感じていますか?
●適切な教材がない(35.7%)
●教員が多忙で子どもの権利についての授業を実施する準備ができない(32.1%)
●子どもに関心を持ってもらうのが難しい(32.1%)
●教育家庭・カリキュラムが詰まっていて子どもの権利についてお添える授業をする時間がない(30.8%)
「子どもの権利」の教育に関する課題に関するアンケート結果では、「適切な教材がない」こと、「教員が多忙で授業を実施する準備ができない」こと、「子どもに関心を持ってもらうのが難しい」ことが上位となりました。
教員の負担を増やさず、子どもたが興味をもって取り組める「子どもの権利」を知るための教材の必要性がわかります。
いかがでしたでしょうか。
基本的人権の尊重をはじめ憲法につながる「子どもの権利」。
学童保育所の職員の認知度・理解度を深める必要があると考えられます。