不登校の子向け「新しい評価基準」に期待!

文部科学省は、不登校の小中学生に対して、個別に学習計画の立案や達成状況の確認ができる新たな制度を導入する方針を示しました。
これまで、一部の特例校を除いては、多くの学校で不登校の児童生徒の実情を十分に踏まえた教育課程が整っていない現状があります。
不登校児童の増加に対応し、それぞれに適した学びの環境を整えることが今回の目的です。
(※2025年4月11日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
不登校支援に向けた新たな制度案が提示される
文部科学省は、4月10日に開催された中央教育審議会の特別部会において、不登校の児童生徒を対象とした新たな支援制度の案を示しました。
この制度では、年間に30日以上欠席している子どもたちを主な対象とし、教育委員会が設置する「教育支援センター」や、学校内にある「校内教育支援センター」で学んでいる児童生徒が含まれます。
これらのセンターでは、退職した教員などが指導を行っております。
なお、民間のフリースクールに通っている子どもたちはこの仕組みの対象外とされており、文科省の担当者は「教育委員会の管理下にある施設に限定した」と説明しています。
不登校児童への柔軟な教育支援体制が検討段階
現在、全国にある「学びの多様化学校」58校では、各学校が独自に教育課程を構成することが特例として認められております。
しかし、その他の一般的な学校においては、学習指導要領に則った統一的なカリキュラムが求められており、不登校の児童生徒の多様な学習ニーズに十分応えられていない現状があります。
文部科学省が提示した新たな案では、教育支援センターの指導員と学校の担任が連携し、それぞれの子どもに応じた個別の指導計画を策定する方針です。
この計画に基づき、通常の授業時間を短縮したり、基礎からの「学び直し」についても適切に評価したりできるようになります。
さらに、この評価は高校入試での参考資料としても利用される方向で検討が進められています。
今後の課題としては、計画や評価を担当する専門人材の確保や、教育の質をどのように維持するかが挙げられており、具体的な運用方法については引き続き議論が行われる見通しです。
不登校支援の新体制に向けて課題と現状の整理
文部科学省の発表によりますと、2023年度における不登校の小中学生の数は、前年比15.9%増の34万6,482人に達しました。
この増加傾向は11年連続となっており、深刻な状況が続いています。
全国には、教育支援センターが1,743カ所設置されており、2023年度には約3万365人がそこで学習支援を受けました。
また、校内教育支援センターは2024年7月時点で1万2,712校に整備されており、利用者は数万人規模に上ると見られています。
こうした背景を受けて、文部科学省は、不登校の児童生徒一人ひとりに合わせた学習計画の作成と、成果の評価を可能とする新たな制度案を打ち出しました。
ただし、この仕組みの具体的な制度設計や運用方法については、今後の検討課題として多くの議論が必要とされています。
不登校でも「努力が認められる」仕組みに期待の声
「子どもが努力した分をきちんと評価してもらえるなら、本当にうれしいです」
と語るのは、東京都に住む43歳の母親です。
彼女の息子さん(13歳)は、区立中学校に在籍しており、小学5年の3学期以降、教室に足を運ぶことができなくなりました。
それ以来、登校はしていませんが、最近になって地域の教育支援センターで、小学校の学習内容を振り返る学びに取り組み始めました。
「本人に合った内容で成果を認めてもらえたら、自信にもつながると思います」
と話しています。
また、4月10日に開催された中央教育審議会の特別部会では、文部科学省が示した支援策に対して、「生徒の学習意欲を引き出すきっかけになる」といった前向きな意見が大学教授らの委員から多数寄せられました。
全国に広がる不登校支援策―学びの機会をすべての子に!
不登校の小中学生の数は年々増加しており、2023年度には過去最多となる34万6,482人に達しました。
文部科学省は同年、不登校の子どもたちが学習の機会を確保できるよう、「誰ひとり取り残さない」ことを目指す支援プランを打ち出しました。
このプランでは、柔軟な教育課程を導入する「学びの多様化学校」の整備をはじめ、教育委員会が運営する教育支援センターや、学校内で安心して過ごせる居場所・学習環境の拡充を進めてきました。
今回示された新たな支援制度も、こうした取り組みの延長として位置づけられています。
まだ多い・・・不登校支援の実現に立ちはだかる課題
制度の実施には、いくつかの課題が存在します。
まず、子どもたちを受け入れる体制が地域によって整っていない点が挙げられます。
文部科学省が一昨年に行った調査では、全国の約3割の自治体に教育支援センターが設置されていないことが明らかになりました。
校内教育支援センターの整備率も昨年時点で46.1%にとどまっており、地域差が大きいのが現状です。
例えば、さいたま市や川崎市ではすべての学校に導入されていますが、徳島県では1割にも満たない状況です。
中央教育審議会の特別部会でも、「全国で公平に支援を行うための工夫が必要」との声が上がっています。
次に問題となるのは、人材の確保です。
子どもごとに学習計画を立て、進捗を評価できる職員を、教育支援センターや校内の居場所に配置する必要がありますが、文部科学省の担当者によれば、教員免許を持たないスタッフも含まれているとのことです。
さらに、評価制度の設計も重要な検討項目です。
通常の授業を受けている生徒と同じ基準で内申点を評価しない場合、高校入試でどのように反映させるかが課題となります。
特別部会でも、評価を担う人や入試での扱いに関して疑問が出されました。
これに対し、文部科学省の担当者は「一定のガイドラインを策定する方向で考えている」と述べています。